シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ふと、奥の個室に電気が点いているのに気が付いて、まだ津島さんが残って仕事しているのかな、と思った。「お疲れ様です」と中に声を掛けた。

「えっ、あっ! 沙耶ちゃん、今帰り??」

 中から慌てて顔を出したのはハルくんだった。その姿を見て、何となくしまったなと思う。

「あ、うん。そうだよ。ハルくんは……残業?」

「……うん。まだ研修期間だし、覚える事も多くって」

 そう言って、彼は「ハァ」と力無くため息をついた。見るからに元気が無い。頑張り過ぎて疲れを溜め込んでいるのかもしれない。

 私はハルくんを見て「最初は大変だよね」と言葉を重ねた。

「でも、あんまり無理したら駄目だよ? 体調崩したら元も子もないし。帰れるなら早く帰って休んだ方が良いよ?」

 ハルくんは俯いた顔を上げて、ジッと私を見つめた。

「……な、なに?」

 彼の真剣な眼差しについ怯んでしまい、スマホを持つ手に力が入る。

 急に右手を取られてそのまま奥に引っ張られた。

 ーーえ。

 手を引かれた際に、その手からスマホがするりと滑り、廊下へと落下した。

 資料室の様な個室に引っ張り込まれた私は、ハルくんにぎゅうっと抱きしめられていた。今の状況を把握し、恥ずかしさに顔が火照る。

「は、放して…っ」

「嫌だ」
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