シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ハルくんは私の頭を抱えるようにして、抱きすくめた。体の小さな私は、ハルくんの腕の中にすっぽりと収まって、全く動けない。さすがに男の人の力で押さえ込まれているだけあって、グッと胸を押し返そうとしてもビクともしない。

「……お、お願い、ハルくん。放してっ」

「嫌だ、放したくない。俺は沙耶ちゃんが好きなんだ」

「それでもっ、こんな一方的なのは困るよっ」

 彼の腕の中で身動きひとつ取れない事が次第に怖くなってきて、私は涙声で必死に訴えた。

「お願い、ハルくんっ、放して……っ!」

 やや時間を置いてから、彼の腕からフッと力が抜けた。その隙に私はサッと後退りする。

「やっぱり。そうやって俺から逃げるんじゃん?」

 ハルくんは傷付いた表情で、後ろの棚にもたれ掛かり、私を見ていた。

「……ハルくん、おかしいよ」

「……。なにが?」

「だって私、鳴海くんと付き合ってるんだよ?」

 その瞬間、彼はグッと歯を食いしばった。「また鳴海 仁??」と眉間にシワを寄せる。

「アイツのどこがそんなに良いの?」

 再度、間合いに入り込まれ、右手を掴まれた。

「……痛いよ、ハルくん」

「だってアイツ。まだ学生じゃん? 働いてもいない奴と付き合ってて、不安じゃないの??」

「……」
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