シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか？

　すれ違い様に聞いた投げやりな言葉は微かに震えていた。きっと物凄く傷付けた。ハルくんは泣いているかもしれない。

　けれど、ああやってキッパリと拒絶しないと、ハルくんは＂分からない人＂だ。自分にそう言い訳をして、ハァとまた吐息を落とした。

　ハルくんが事務局に入って行くのを見計ってから、私は戸口に落としたスマホを拾い上げた。中を確認して、壊れていないと分かり安堵する。時間は約束の時間を十分過ぎていた。

　微かに手が震えているのを見て、もう片方の手で押さえ付けた。

「……沙耶さん」

　すぐ側に鳴海くんが立っていた。

　不意に心細さが募り、彼へと駆け寄った。彼は大体の経緯を把握していた様で、私は何も言わずに階段を昇った。

　学校を出てから、鳴海くんが口を開いた。

「俺が降りて行った時には……沙耶さん、アイツと言い合いしてたんだけど。……手を握られる以外は、何もされなかった？」

　私は彼を見て言い淀んだ。抱きしめられた、と言うべきかどうかを迷った。鳴海くんが知ったら嫌な気持ちになるかもしれないと思った。

　仕方なく首を＂縦に＂振った。

「……本当に？」

「……っ」

　真っ直ぐに見つめてくるその目が見れなくて、私は目線を落とし「もう大丈夫だから」と無理やり笑った。

「沙耶さんっ」