シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 鳴海くんも自転車だから、彼が乗ったら私も乗る事にしよう。何気なくそう思って、自転車を手で押して歩く。

「……沙耶さんってさ?」

「えっ、なに?」

 不意に話しかけられ、ドキッとする。

 鳴海くんはまだ話し足りなかったのか、際どい質問を投げてきた。

「もしかして。結婚、してない?」

「え…….」

 ーー何で?

 真顔で表情を固めていると、鳴海くんが言葉を足した。

「その。指輪、してないからさ。学校の友達連中もそんな事言ってたし。
 ……あ! ほら。もう一人のお姉さんは指輪してるから」

「あー……うん。そうだね」

 結婚の二文字に、私の心臓がズシリと重くなった。

 鳴海くんが乗らないので、未だに二人で自転車を押している。

「あ、ごめん。もしかして、気にしてた?」

「ううん、違うの……って。違う事も無いか」

「え…」

「正直なところ、気にしてる。私、結婚歴も無いのに、子供がいて。シングルマザーだから。
 颯太を産んだ事に悔いは無いけど、父親を作ってあげられなかったのは……やっぱり心苦しいの」

「そう、なんだ?」

 うん、と頷くと、鳴海くんは無言になった。
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