シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 乾いた声で言いながら、鳴海くんからスマホを渡される。

「……え」

 ーー何でって。……何でだろう?

 私は目を瞬き、記憶を辿っていた。

「……はは、有り得ないんだけど?」

 言葉で笑っていても、明らかに鳴海くんは怒っていた。ドクンドクンと心臓が不規則に震え出した。

「えっと……それは」

 そこでハッとあの日の事を思い出した。颯太がショッピングモールで迷子になった時、手分けして探そうという話になり、見つけた時の連絡先として私の携帯番号を教えたのだ。

 鳴海くんは、深く嘆息して「もう、いいよ」と吐き捨てるように言った。

「帰ろう、颯太くんが寂しがるから」

「……うん」

 そのあと、家まで送って貰ったけれど、鳴海くんは相槌以外何も話さなかった。携帯番号を教える事になった経緯を丁寧に説明したけれど、聞いているのかいないのか、そんな返答だった。

 怒っているのが分かって、目の前が暗くなった。胸をちりちりと焼かれる思いがして、心の奥底で悲鳴を上げている。

 あの時電話に出なければ良かったと、小さな二者択一にすら後悔を募らせる。

「おやすみなさい」と言って手を振るけれど、鳴海くんは「うん」と言っただけでこちらも見ずに自転車で走り去ってしまった。

「ただいま……」
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