シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
25.愛情表現の戸惑い


 翌朝。私はスマホを握りしめながら駅の入り口で立ち尽くしていた。

 ーー鳴海くん、遅いな。いつもならもう来てる時間だけど……どうしたんだろう。寝坊かな?

 昨夜の不機嫌な彼を思い出し、胃の底がズグンと痛くなった。

 ーー昨日の事を怒ってて先に行っちゃった?

 それとも、連絡無しにお休みしてる?

 一度電話を掛けてみれば良いのだけど、まだ怒ってるかもしれないと思うと、怖くて出来ない。
 あれからメッセージのやり取りもしていない。

 私はスマホの液晶をまた確認する。

 いつもの時間から十分を数えた時、「沙耶さんっ」と名前を呼ばれた。

 俯いた顔を上げると、息を切らした鳴海くんが慌ててこちらへ走って来た。

「ゴメン! 寝坊したっ」

 着くなり平謝りの彼を見て、唖然とする。

「急ごう」と言って、右手を繋がれた。

 ーー寝坊、だったんだ……。

 私は無言で安堵を飲み込んだ。

「ごめんね、沙耶さん、仕事間に合うよね?」

「……あ、うん。大丈夫。この時間ならまだ十五分前には着けるだろうし」

「そっかぁ」

 大袈裟に安堵する彼を見上げ、いつもの鳴海くんだと思った。

 駅のホームに並んだ時、鳴海くんがぽそっと呟いた。

「…….昨日、ごめんね。嫌な態度取って」

 ーーえ。
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