シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「あ、ううんっ。私の方こそ、ごめんなさい。鳴海くんに嫌な思い、させたから」

 鳴海くんは私を見て、安心したように微笑んでいた。恋人繋ぎの手に力がこもる。

 学校のガラス扉を抜け、いつものようにお弁当を渡して「じゃあ、ここで」と手を振るのだが。

「購買まで送ってくから一緒に行こ?」

 鳴海くんにまた手を繋がれて、地下へと降りた。休憩室の鍵を開け、とりあえず机に鞄を置いた。祥子さんはまだ来ていない。

「ありがとう。それじゃあ、着替えて準備するね? 鳴海くんももう教室に行った方が」

 そう言った途端、ギュッと抱きしめられた。心臓がドキンと震え、息が詰まる。

「嫌だな……沙耶さんと離れるの」

 ーーえ?

「鳴海く、」

 フッと目を上げた時、彼の滑らかな指先が顎に触れてクイと持ち上げられた。状況を察して、慌てて目を閉じる。

 唇に柔らかな温もりが一瞬だけ落ちて、目を開けた。鳴海くんの艶のある瞳が私の目を覗き込んでいた。

「これからは購買まで送るから、毎朝ここでキスしよ?」

 ーーえ。

 瞬間、顔全体が熱くなる。私はコクコクと頭を縦に振った。

 一昨日までは手を繋ぐのが精一杯だったのに、黒髪にしてからの鳴海くんは行動が大胆で戸惑ってしまう。

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