シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ずっと待ち侘びていたキスが早くに叶って嬉しいのだが。なんていうか……極端だ。

 鳴海くんは嬉しそうに微笑んで、私の頬を手の平に包んで撫でた。

「……ふっ。赤くなってるの、可愛い」

 ーーそ。草食系から……、肉食系??

 リアルにチェンジしたんじゃないかと錯覚してしまう。何も言えずにぱちぱちと瞬きしていると、不意に声を掛けられた。

「あら。おはよう? お二人さん」

 鳴海くんの真後ろから聞こえていて、首を傾けて見ると、出勤したばかりの祥子さんが腕を組んで立っていた。

 ーーい、いつから居たの??

 羞恥の熱は耳にまで達する。

「あ。おはようございます」

 涼しい顔で鳴海くんが会釈した。

「ところで、仁くん?」

「はい」

「祥子さんは毎朝この時間には出勤するから、それまでにコトを済ませておいてね?」

「あー……はい。分かりました」

 ーー"コト"って……!

 さっきから心臓のバクバクがおさまらない。

「それじゃあ、沙耶さん。また来るね?」

「……うん」

「浮気しちゃ駄目だよ?」

「う、うんっ」

 じゃあ、と手を振って彼は階段を駆け上がって行った。

「仁くん、ウハウハだね〜?」

 祥子さんは面白そうにアハハと笑い、休憩室の扉を閉めた。

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