シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 当然年上だって思われただろうし。

「あと、昔病院で助けてくれた"サヤねーちゃん"だって事も言っておいた」

「……そ、そっか」

 私に対して良い印象を持って貰おうと思って、鳴海くんなりに働きかけてくれたのだろう。

「ちなみに。ビックリの意味は、俺が結婚したいと思ってる事に対して、……ね?」

「え?」

 パッと俯いた顔を上げて、再度彼を見つめた。

「母さんさ、離婚とか再婚とか…そういうので俺の事振り回したっていつまでも気にしてて。俺が未だに、結婚願望のない奴だって思い込んでたから」

「……そうなんだ」

「うん」

 どうなんだろう? それでも初婚からコブ付きだっていう条件は変わらない。

 私は不安から眉を寄せた。

「沙耶さん、結婚の挨拶とか気にしてる?」

「……うん」

 沈んだ声で頷くと、丁度電車がホームへ滑り込んだ。吐き出される乗客の波に乗って、鳴海くんと改札まで進む。

「そんな気負わなくても大丈夫だよ?」

 パスケースを鞄に仕舞い、彼がけろりとした口調で言った。

「母さん、沙耶さんがシングルマザーって事に共感して、一度会ってみたいって言ってたから」

「本当に?」

 うん、と頷き、鳴海くんは私の手に手を重ねた。
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