シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「ただ、実家に行くのは……まだ先でも良い?」

「え……」

 行けるなら早いに越した事は無いんだけど、と胸中で呟き、首を傾げた。

「母さんがさ…、俺がちゃんと就職出来るか心配しすぎて、原田さんと籍入れるの先延ばしにしてるんだ。だから先に入籍しなって言ってからかな。就活でも安心させてやりたいし」

 ーーそっか。

 それに鳴海くんの就活に関しては、昨日父から支えてやれと言われたばかりだ。

「なんか……鳴海くんらしいね?」

 繋いだ手にきゅっと力を込めた。目を細めたグレーの瞳がふわっと優しく揺らいだ。

「ごめんね。挨拶の事は、俺もタイミングを考えておくから」

 反対されるかもしれないという不安が和らぎ、彼に任せていたらきっと大丈夫だ、と思った。根拠のない安心感が私を満たしていた。

 学校が見えた所で、いつものようにドキドキと心音が高まった。鳴海くんともうすぐキスできると期待して、私はキュッと口を結んだ。

「おっスー、仁!」

「おー」

 入り口の扉を潜り抜けた時、丁度階段から澤野くんが降りて来た。

「お前今日提出の課題終わったかー?」

「ん、いや。あともうちょいだけど」

「ヤマセンが心配してたぞー? ちゃっちゃと終わらせろよー?」

「おう」
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