シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「凄いよねー。沙耶ちゃんたちのイチャコラがもう自然体に見えるわー」

 ーーい、イチャコラって。

「だって? 良かったね、沙耶さん」

 うん、と曖昧に頷いた時。

「あ、仁くんオツ〜!」

「おー」

 階段から降りて来た臼井さんが、鳴海くんにひらひらと手を振った。艶を帯びたストレートヘアを揺らす、美人な彼女だ。わけもなくドキンと心臓が打ち、暗い雲が陰るように落ち着かなくなった。

 一瞬、眉をひそめるものの、私はまた模造紙に向き合った。

「待てよ、詩乃ー」

 ーーん?

「テッちゃん、遅いよ〜?」

 臼井さんの後を追って男の子が降りてきた。確か、一年生の男の子だ。二人は仲睦まじく寄り添い、肩パッドを置いた棚を見ていた。

「何ミリかな?」

「私三ミリがいい」

 祥子さんがいるレジまで行き、二人は買い物を済ませてまた階段を上がって行く。

 模造紙を巻く手を止め、私は彼らの様子をポカンと見ていた。

「沙耶さん?」と不思議そうに顔を覗き込まれた。

「臼井さんって……」

「……臼井?」

「……その、鳴海くんの事好きだったよね?」

「え?」

 彼は目を瞬き、キョトンとしている。

「あ、いや。私の勘違いだったのかな。今年の初め頃にそう感じたんだけど……」

 鳴海くんは「ああ」と息をついた。

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