シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「元気な赤ちゃん、産んで下さいね?」

 そう言って最終日にハグをすると、祥子さんは嬉しそうに笑い、「産まれたらまた連絡するね!」と言っていた。

 後任者の香帆ちゃんと二人体制になり、一週間ほど過ぎた頃。やたらと寒冷紗(かんれいしゃ)が売れるようになった。寒冷紗とは荒く平織に織り込んだ白い布の事で、農業に使ったりするのを見た事がある。

 ーーそう言えば寒冷紗って何に使うんだろう?

 去年も同じ時期に売れていたのだが、何に使っているかなど考える余地もなく、未だに知らない。買いに来るのは主に三年生だ。

「沙耶さん。寒冷紗四メートルちょうだい?」

 鳴海くんから注文を受け、太い束になったそれを一メートル定規で計り売りする。レジで八百八十円を受け取り、尋ねてみた。

「ねぇ。寒冷紗って何に使うの?」

 ーーしかもそんなに沢山。

「卒業制作に必要なんだよ」

 そう言って笑うものの、何を作っているのかは分からない。

「あ。そうだ、沙耶さん! 来月の十三日……日曜なんだけど。空けておいてくれる?」

「え、あー……うん」

「颯太くんも連れて三人で出かけよ? プランはこっちで考えておくから」

 私はキョトンとし、無言で頷いた。
< 354 / 430 >

この作品をシェア

pagetop