シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 売れた裏地や釦を補充するため、笑顔の香帆ちゃんを西店へと送り出す。私はその間、届いたケント紙の山を十枚綴りにして輪ゴムで止める作業をしていた。

 "コンコン"

 不意に裏地を詰めた棚をノックされ、ヒョイと顔を出した。授業時間なのに、また模造紙か何かを売ってくれと学生が頼みに来たのだと思った。

「……あ」

 ニコッと笑って立っていたのは鳴海くんだ。

「どうしたの?」

 今さら何かを売ってくれと彼が言いに来る事は無いので、不思議に思った。

「沙耶さん、今いい?」

「え……?」

 休憩室の置き時計を確認すると、三時半を幾らか過ぎた所だった。香帆ちゃんがまだ戻る時間では無いし、ケント紙の束も大方出来ていたので、私は「うん」と頷いた。

 鳴海くんに付いて階段を上がり、学校の入り口を抜け、本館とは別の建物に入る。

 ーーえ。別館?

 ここに入るのは初めてなので、私はキョロキョロと周りを見回した。今年展示会で出品した学生たちの様子が、写真として何枚も飾られている。

 鳴海くんはエレベーターの上ボタンを押し、程なくしてキンコンと電子音が鳴った。

「どこに行くの?」

 エレベーターに乗り込んでから、何となく不安になった。学生や先生たちしか出入りしない場所に、部外者の私が入っても良いのだろうか?

「着いてからのお楽しみ」
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