シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 見た途端、わっ、と口中で呟いた。チカチカと目に眩しく、思わず息を飲み込んだ。

 真っ白なオーガンジーの生地にレースやビーズなどの装飾を施していて、キラキラと輝いている。

 ーー凄い……。

「ウェディングドレス…?」

 その見栄えは圧巻の一言だ。

「そっ。一応グループでの卒制なんだけどさ……締め切りを早めて大急ぎで縫い上げた」

 そう言って鳴海くんが息をつく。

「凄いねっ? こんなの本当に作れるんだ?」

 若干興奮して尋ねると、鳴海くんはニコッと八重歯を覗かせた。

「沙耶さんが着るんだよ?」

「………え」

 ーー今、なんて??

「それじゃあ鳴海、こっちのも出すぞー?」

「あ、はい」

 奥から運んで来たと思われるもう一つの物体から、先生と澤野くんで布を取った。

「わっ……」

 ーー……タキシード、だ。

 ウェディングドレスとタキシードが並ぶと、自然と"結婚"の二文字を意識してしまう。

「沙耶さん、寒冷紗何に使うかって聞いたよね?」

「……あ、うん」

「寒冷紗はね。ドレスの仮縫いをするのに必要なんだ。トワールの代わり」

「そー……なんだ」

 ーーて事は。三年生は毎年ドレスを作っているという事か。

 何となくそんな事を考えていると、鳴海くんが予想外の事を口にした。
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