シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 グスッと洟をすすり、颯太に笑顔を見せる。

「ほら、ママ。ジンくんが待ってるよ? 行こ?」

 颯太に手を引かれて、ようやく鳴海くんの場所まで歩み寄る。

「ははっ、泣き虫」

 鳴海くんは颯太と笑い合っていた。

「それではご両人、よろしいかな?」

 そう言う神父役は言わずもがな、山本先生だ。一冊の本を聖書に見立てたスーツ姿の神父様だ。

「新郎、鳴海 仁」

「はい」

「新婦、水嶋 沙耶」

「…はい」

「あなた方は今日の善き日に夫婦となり、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも……、互いを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「はい、誓います」

 夢にまで見た光景に、また涙を滲ませ、「誓います」と私も明瞭に言い切った。

 指輪交換の手順では、彼に渡す指輪を用意していなかったので、クリスマスの時に彼からプレゼントされたそれを、私だけが填めてもらった。

「それでは、誓いのキ…………、スをと言いたい所だけど。……しても良いのかな?」

 急にしどろもどろになる山本先生の視線を受けて、私は颯太を見下ろした。

「あの、颯ちゃん」

「ん、なにー?」

「ママとジンくん。チュウしても大丈夫かな?」

 颯太は私を見上げ、意外とあっさり口にした。

「うん、ジンくんならいいよー」
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