シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
29.鳴海くんの実家と約束事
「あなたが仁の言ってた"サヤねーちゃん"ね?」
そう言ってふわっと笑みを広げた彼女は感じの良いお母さんだった。
*
プチ結婚式を挙げた次の週の日曜日。私と鳴海くんは颯太を連れて、彼の実家へと赴いた。
幾つか電車を乗り継ぎ、およそ一時間半もの時間をかけて最寄り駅に着いた。ここから歩いて二十分程度の場所に実家があるらしいのだが、颯太と一緒に歩くと優に三十分はかかるだろう。
「仁くん!」
不意に、パッパ、とクラクションが鳴らされ、銀色のセダン車が私たちの目の前で停まった。
運転席の窓から顔を覗かせたのは、五十歳前後の紳士的な男性だ。
「お母さんからそろそろ着くって連絡貰ったから迎えに来たよ。すれ違わなくて良かった」
「原田さん…!」
驚く鳴海くんを見て、運転手の原田さんは「久しぶり」と人懐っこい笑みを浮かべた。
*
「……それでね、ぼくの家からたくさん電車にのったんだよ? ちかてつもあってね、すっごく楽しかった!」
「へぇ〜、そうかそうかぁ。それじゃあおじさんも一度、電車の旅でボクのお家まで遊びに行ってみようかな?」
「うん、良いよー」