シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 颯太は鳴海くんの義理の父にあたる、原田さんを(いた)く気に入った様子だった。きっと彼から滲み出る人柄の良さを見抜いたからだろう。

 鳴海くんから聞いた話だと、彼の就職が決まって直ぐ、お母さんがこの原田さんと入籍したらしい。

 せせこましく住宅地が並ぶ通りで車が停まった。門扉の横には表札が有り、『北澤』となっている。

 ーーあれ? 『鳴海』でも『原田』でも無いの? 実家で合ってるんだよね?

 不思議に思って首を傾げていると、「今戻ったよー」と原田さんが玄関の三和土に立ったままで中に声を掛けた。

「はーい」と返事が聞こえ、お母さんらしき女性がパタパタと廊下を駆けてきた。私は颯太と手を繋ぎ、ピシッと気を引き締める。

「まぁまぁ、遠い所をよく来てくれたねぇ。あら、仁。本当に黒髪になってるじゃない?」

「今はそれ良いから」

「ああ、そうね。初めまして、母の三津子です」

 そう言って丁寧にお辞儀をしてくれるので、私も慌てて頭を下げた。「水嶋 沙耶です」と自己紹介をすると、私の真似をして、「みずしま そうたです」と颯太もペコッとお辞儀する。

「あら、まぁ。賢そうなボクねぇ」

 お母さんが柔らかな笑みで屈んだ時、「三津子さん」と原田さんが呼んだ。
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