シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「あの時は……うちの中がグチャグチャで、色々あったから……。仁にも無理をさせちゃってね。盲腸だなんて、少しも気付かなかったわ」

「そう。なんですか…」

「ええ。丁度、鳴海と……前の夫と離婚調停で揉めててね、弁護士の先生と電話をしてる最中だったの。待合室に戻ったら仁の姿が無くて、大慌てで探し回って……。そしたら看護師さんが声を掛けてくれて。すぐに手術になったわ」

 お母さんの話に何て受け答えをしていいのか分からず、私は彼を見てから俯いた。

 けれど、一つだけ分かった事が有った。『鳴海』は彼の実父の姓なんだ。だから表札にあった『北澤』はきっとお母さんの旧姓……。

 離婚した夫の姓を子供に名乗らせているのは、社会で浮かずに、今まで通りの生活を滞りなく送って欲しいからだろう。父親の姓を受け継いでいる事に、おそらくは大きな意味があるからだ。

「ごめんなさいね、何だかしんみりしちゃったわ。そろそろあの人も戻って来るだろうし、お昼にしましょう」

「……え、あ。はい」

「仁! 沙耶ちゃんに手伝って貰うから、颯太くんと遊んでてあげてね?」

「分かってるよ」
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