シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「気を引きたくて他の子にちょっかいかけるのは……確かに駆け引きなのかもしれないけど。この場合、全く効果無いよ? だからやめた方がいい」

 暫く無言で私を見たのち、澤野くんは唇をキッと引き結んだ。

「……ゴメン。沙耶ちゃんの言う通り。俺、入学した時からずっと愛梨の事が好きなんだ。愛梨は仁の事しか見て無いけど……今が自分にとってオイシイ状況なのは理解してる。
 でもそう思ったら愛梨に申し訳ないし……この先をどうすれば良いかも分かんなくて」

「……そうだよね」

 好きな人の気持ちが思い通りになるなら、私だって今頃は結婚してたはずだし。

 そこで、エプロンのポケットに入れた携帯がブルっと震えた。

「……ごめんね。ちょっと」

「あ、うん」

 スマートフォンを取り出すと、澤野くんは私から視線を外した。

 一件のメッセージが届いていて、送り主は鳴海くんだ。

【急にゴメン。そっちに澤野行ってる?】

 ーーあぁ。授業サボってるんだもんね、心配されてるよ。澤野くん。

「とりあえずは、澤野くん。授業に戻ったら?」

「え…….」

「鳴海くんと愛梨ちゃんの事はなるようにしかならないし。愛梨ちゃんが悲しむようだったら、その時に澤野くんが支えてあげなよ? 自分を見て欲しいなら、その方がよっぽど効果有るよ?」

 澤野くんは、頬を染めながら不安そうに頷いた。
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