シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「ごめんね、沙耶ちゃん。俺、授業戻るわ」

「うん、頑張って!」

 階段を駆け上がる彼を見ていると、不意に空腹を感じた。

 ーーあぁあ。お腹空いたなぁ……

 とりあえず、鳴海くんのメッセージに返事を書いた。

【うん、来てたよ。でも、今戻って行ったところ】

 一瞬、悩みを聞いていたと書こうと思ったけれど、やめにした。誰しも、他人に知られたくない悩みの一つや二つは有るだろうから。

 ーー私も何やってんだが。他人《ひと》の色恋に偉そうな事言えるほど、スキル無いのになぁ。

 休憩場所に入って、早速お弁当にしようと思うのだが。

「あ、水嶋ちゃん」

 ーーうう、今度はなに?

 振り返ると事務局の津島さんが煙草の箱を手に、笑みを浮かべていた。丁度喫煙所に向かう所なのだろう。

「この間、言ってた事でちょっと話したいんだけど。今いいかな?」

 私はお腹に手を当て、下を向く。

 ーーこの間の事って。私に子供がいる事、だよね。話すのは別に構わないんだけど……。

「あの。ごめんなさい……実はまだ、お昼を食べていなくて。食べ終わってからでもいいですか? 私も後でお弁当箱を洗いにそっちに行くので」

「えっ、ああ。ゴメン。お昼まだだったんだ?
 あ、澤野が来てたからか。
 うんうん、分かった。じゃあご飯食べておいで?」

「……はい」

 澤野くんが来てた事、知ってたのね。
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