シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 オレンジ色の視界が急に暗くなり、誰かが俺と日光の間に割り込んだ。目を開けなくても声で分かる。駒野だ。

 顔をしかめて奴を見ると、何がそんなに面白いのか、にこにこと笑みを浮かべるそいつがいた。

「いつも冷めてるとは思ってたけど、今日はいつにも増してドライでアンニュイだなー?」

 同じクラスの駒野 潤は、明るくて時に暑苦しい、お節介野郎だ。

「靴箱にまだ靴が有ったから、ここだと思って」

 何故ここに居る? という問いを勝手に作って答える駒野は、それが必要だと思ったのか、俺の隣りに座って「食べる?」とガムを差し出してきた。

 いい奴には違いないが、時々思う。放っておいてくれ、と。

「いや、いい」

 ため息と同時に上体を起こし、座った。

「仁、帰らないのかよ? もう五時になるぜ?」

「……うーん」

 時間なんてどうでもいい。が、駒野は不意に核心をついてきた。

「何かやな事でもあった?」

「……別に」

 有った。有りまくりだ。第一、俺の人生なんて、試練の連続だ。望みは大体叶わない。

 ただそれを気安く他人には言えない。俺の悩みに対して分かった顔で頷かれると、吐き気がする。

 どこまでも捻くれてねじ曲がった俺は、害だな、と思う。公害。だからそっとしておいて欲しい。
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