シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「なぁ、仁よ。いっその事彼女でも作れば?」

 ーーは………?

 何がいっその事なのか分からず、俺は眉を潜めた。隣りの駒野をまじまじと見る。

「だってさ、仁って見た目イケメンじゃん? 良いと思うけどなぁ〜、彼女。つまらない日常も一変すると思うけど?」

 言っておくが、俺は「別に」以外、何も言っていない。駒野が勝手に喋ってるだけだ。

「一組の吉野美衣子なんてどうだ? アイツ、結構可愛いし、仁に夢中みたいだぜ?」

 名前を聞いて、あの子かと思う。ストーカー疑惑満載の女子だ。おとついも家の前で出会(でくわ)した。

「個人的にストーカーはパス。……てか、何で"彼女"?」

「そりゃあ彼女が出来ればさぁ」と勿体つけて言ってから、ゴニョゴニョと耳打ちされる。

 言っておくが、ヤロー同士の耳打ちなんて寒気しか感じない。こいつ大丈夫か?

 とにかく、駒野曰く、ゲスな行為が好きなだけ出来るから、だそうだ。

 別に俺だってセックスに興味が無いわけじゃない。ただ、正直それイコール、あのクソ親父を思い出してしまい、嫌悪しか感じない。

 五年前、俺の親父は不倫をして家を出て行った。それからというもの、母親はいつもごめんねと俺に謝り続ける。「お母さんのせいで、こんな事になってごめんね」と。
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