シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 結婚って何なんだ? 夫婦って何? 赤の他人同士で一体何を分かち合うんだよ?

 ただただ疑問だ。それなのに俺は昨日見てしまったんだ。母親のデート現場ってやつを。

 まだ学校のある真昼間の時間に、サボった罰の如く、見せ付けられた。母親は俺の知らない笑顔で男と腕を組んで歩いていた。

 あの時泣きながら俺に謝ってた癖に、たった五年で心変わり。普段から俺じゃない男の事を考えていたなんて、最悪もいい所だ。だからかもしれない。何処か裏切られたような気分でやさぐれていた。

 はぁ。帰りたくない。消えたい、消えたい、消えたい。

「とにかく、仁。元気出せよー?」

 駒野は何も言わない俺を見捨てず、ただただ励ましてくれた。

「さっきのヤる話は別にしても、恋愛は良いと思うぞ?」

 そう言って、スクッと隣りで立ち上がる。駒野が去ってから、俺はぼんやりと考えていた。

 恋愛。

 確かに小学生の頃にも中学の頃にも、好きな女の子や気になる女子はちらほらといた。

 その中でいつまでも記憶に残って消えないのが、たった一度会っただけの"サヤねーちゃん"だ。

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