シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
高校生らしい学校の制服を着た彼女は、黒髪を二つに括った親切なお姉さん。名前とそれ以外は覚えていない。顔も、耳に心地いいと思った声も、すっかり忘れてしまった。
なのにまた会って、どうしてもお礼が言いたいと思っていた。
両親が日頃から離婚で揉めていて、あの頃の俺はまさに不幸のドン底に落ちていた。だからだろう。サヤねーちゃんの存在は、あの時の俺にとって、強烈な彩りを残したんだ。
入院中、たびたび待合室に降りてその姿を探した。サヤねーちゃんらしき人の姿は全く見えなかった。
退院してからも、家からかなり遠いあの病院まで電車を乗り継いで何度か行ってみた。やっぱり会えない。
周期的に、気持ちが落ちた時なんかにあの総合病院を訪れ、あの時の席に座り、サヤねーちゃんが話し掛けてくれた情景を頭の中に思い描いた。
ーー「じゃあ、お姉ちゃんもう行くから。キミも元気になるんだよ? お母さんはじきに看護師さんが呼びに行ってくれると思うから」
最後に聞いた台詞を思い返して、元気になったよ、と伝えたかった。
たった一度会ったきりの見ず知らずのお姉さんだから、どんなに会いたいと思っても会えるはずなど無いのだが。座って思い出す事で気持ちが和らいだ。
なのにまた会って、どうしてもお礼が言いたいと思っていた。
両親が日頃から離婚で揉めていて、あの頃の俺はまさに不幸のドン底に落ちていた。だからだろう。サヤねーちゃんの存在は、あの時の俺にとって、強烈な彩りを残したんだ。
入院中、たびたび待合室に降りてその姿を探した。サヤねーちゃんらしき人の姿は全く見えなかった。
退院してからも、家からかなり遠いあの病院まで電車を乗り継いで何度か行ってみた。やっぱり会えない。
周期的に、気持ちが落ちた時なんかにあの総合病院を訪れ、あの時の席に座り、サヤねーちゃんが話し掛けてくれた情景を頭の中に思い描いた。
ーー「じゃあ、お姉ちゃんもう行くから。キミも元気になるんだよ? お母さんはじきに看護師さんが呼びに行ってくれると思うから」
最後に聞いた台詞を思い返して、元気になったよ、と伝えたかった。
たった一度会ったきりの見ず知らずのお姉さんだから、どんなに会いたいと思っても会えるはずなど無いのだが。座って思い出す事で気持ちが和らいだ。