シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 また近いうちに会う可能性も高い。その度に"頭の白い人"、もしくは"浦島さん"で定着されたくなくて、「自己紹介しても良いですか?」と口を開いていた。

 頭の白い人では無くて、彼女の中で俺は今日から鳴海 仁となった。

「私は……。水嶋(みずしま) 沙耶(さや)、です。直ぐそこの家に住んでます。ちなみに息子は颯太(そうた)です」

 彼女は恥ずかしそうに自宅の方を指差して言うのだが、俺は一人、フリーズしていた。

 ーーーミ、

 ミズシマ サヤ……、だって??

 思考が声に出ていたからか、彼女が「あの?」と(いぶか)しげに言った。

「どうかしましたか? 特別、珍しい名前でも無いんですけど」

「ああっ、いや! 颯太くんによろしくっ、じゃあ!」

 しまった! 何、この人、と思われたに違いない。俺はぶんぶんと手を振り、慌てて部屋に引っ込んだ。

 玄関で立ち竦んだまま、再び固まっていた。心臓がバクバクと不規則に音を立てている。明らかに動揺していた。

 サヤねーちゃん……なのか?

 そこだ。俺にとって、最重要事項、ラインマーカーを二重に引く案件だ。

 ご近所に住む水嶋 沙耶さんが、あのサヤねーちゃんだとして。俺は彼女に何て言う?

 あの時はありがとうございました……?
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