シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 あの時はって言って、彼女が首を傾げるのは容易に想像できた。言えない。勝手に確かめる事は出来ても今さら言える筈がない。と言うか、完全にキモい奴だ。

 サヤねーちゃん、なのだろうか?

 記憶の中で大分美化していると思い込んでいたけれど、それは間違いだった。間違いなく美化が足りなかった。

 あんなに可愛いお姉さんだったっけ?

 俺は首を傾げた。

 優しくて親切で、当時の俺を励ましてくれたサヤねーちゃんは、黒髪を二つに括っている女子高生だった。顔は朧げでやはり覚えていない。

 そこでハタと大切な事に気が付いた。

 結婚……してるんだよな?

 だとしたら、水嶋 沙耶さんはどこぞの水嶋くんと結婚して、偶然その名前になったお姉さんだ。サヤねーちゃんとは全くの別人。

 そう思うものの、俺は彼女について考えるのをやめなかった。

 とにかく確かめないと気が済まない。一体何年越しの憧憬(しょうけい)だと思ってるんだ。

 もう一度会いたいと想いを育て過ぎて、サヤねーちゃんは俺の中で、もはや女神と化している。

 とにかく、あの沙耶さんに確かめる。

 どうやって? 

「九年前、すぐ近くの総合病院で小五ぐらいの男の子に声を掛けましたか?」

 ……なんて。
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