シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 とてもじゃないけど、聞けない。

 そんな事を聞いたら、たちまち俺は電波な奴だ。第一昔の事だし、いちいち覚えちゃいないだろう。

 その一、結婚しているかどうか

 その二、年齢

 その三、あの病院を知っているかどうか

 一も二も聞きにくい。二なんて澤野じゃない限り聞けない。聞いたら嫌われるかもしれない。

 三は、普段の会話からはどうやっても繋がらない。いっその事刑事にでもなって、脈絡なく聞き込みが出来れば楽なのに。

 その日学校へ行ったら、いつも買い物をする購買部に沙耶さんがいた。

「え。沙耶さん? 何でここにいんの?」

 あまりの衝撃に、ついうっかり馴れ馴れしい口を聞いてしまった。彼女は別段、気にした素振りを見せず、「今日からここで働く事になって」と答えてくれた。

 水嶋 沙耶さんがサヤねーちゃんかどうかを密かに確かめるのが、楽になった。

 そしてそれが本来の目的に違いなかった。

 しかしどうだろう。

 たった数日で俺はまんまと彼女の魅力にハマってしまった。言っておくが、俺はそこまで惚れやすい体質ではない。

 なのに、完全に恋に落ちたと言わざるを得なかった。

 まず外見からして好きだと感じた。
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