シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
二児のお父さんって。
見た瞬間に思った。まるで猿みたいだなって。
背中は産毛にまみれて、目なんて横一直線に引かれた線のようだ。
直径十センチ程のボールみたいな頭にも殆ど髪の毛が無い。顔だけ見たらどことなく土偶にも似ている。
真っ赤な顔で、息をしているのかどうか危うい感じで眠り続ける赤ん坊。
出産から数時間が経ち、無事に母児同室となった沙耶さんと赤ちゃんを見て、ほう、と息をついた。
赤ちゃんは透明なプラスチックケースで出来たベビーベッドで眠っている。
ちょうどピンポン玉ぐらいの大きさに、きゅっと両手を握りしめて顔の側に横たえている。
小さい、と感じた。
頭も手も足も、全部が全部ミニチュアで、まるで人形みたいだ。
俺は無言で何も言えず、ただただスヤスヤと眠る赤ん坊を見つめていた。
なんだろう、なんか。泣きそうだ。
さりげなく指で目頭を押さえた時、「新生児って可愛いよね?」と沙耶さんがすぐ側で笑った。
「しん、生児……?」
「うん。生まれてから一ヶ月の間はそう呼ぶみたい。この小ささは我が子じゃないと見れないよね……」
隣りに立つ沙耶さんは聖母マリアの様な微笑で赤ちゃんを見ていた。
確かに、と思った。