シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 赤ちゃんと言えば、肌が白くて腕も脚もムチムチでほっぺたもまん丸なイメージが有った。そのイメージも確かに赤ちゃんなのだけど、生まれたては全然違う。

 肌は赤みかがったピンク色で、腕も脚もほっそりとしていて心配になるほどだ。

 この小さな女の子が、今まで沙耶さんのお腹の中にいたんだ。

 俺と、沙耶さんの娘……なんだ。

 不意に隣りから、ふふっと柔らかな笑みが聞こえた。二、三枚引き抜いたティッシュをスッと目の前に差し出される。

「嬉しいよね……私も嬉しい。鳴海くんとの子供」

 俺は無言で口を結び、沙耶さんからティッシュを受け取った。
 どうやら不覚にも泣いていたようだ。

「早く颯太にも間近で見せてあげたいなぁ……」

 沙耶さんは嘆息と同時にベッドへ腰を下ろした。

 颯太は今、学校へ行っている。

 昨夕、自宅で陣痛というものが始まり、大慌てで病院に駆け付けた。運転の合間に颯太にお願いして、お義母さんに電話をかけて貰った。

 陣痛室に通されてから俺はずっと沙耶さんに付き添っていた。等間隔で訪れる陣痛というものを始めて目の当たりにして、凄まじいなと感じた。

 沙耶さんが苦しむたびにオロオロしてしまい、「お父さん! ちゃんと腰を押してあげて下さい!」と助産師さんに言われ、「こう」とやり方まで指南された。
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