シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「うふふっ、毎日声かけてあげてね? 花音ちゃん、パパとお兄ちゃんの声、大好きみたいだから」

「……そうなんだ?」

「うん。胎動がね、違うんだよ。ポコポコってしてたのが、ドンドンって鳴ったりしてて。特に颯太の声に凄く良い反応してた」

 出産で疲れ果てているとは言え、やっぱり沙耶さんは綺麗だった。

 最高に綺麗で可愛くて、俺の自慢の奥さんだ。

 沙耶さんが入院している間、俺は家と会社と病院を行ったり来たりしていた。

 当たり前の事だが、家に帰っても沙耶さんの存在が無いのは寂しい。
 そして俺以上に寂しい想いをしているのが颯太だった。

 入院の合間の土日、病院へお見舞いに行き、デイルームでママと会えた颯太は以前より沢山笑顔を見せていた。
 新生児室のガラス越しに眠る妹を、目をまん丸にして見つめ、「小さい」と呟いていた。

 家にママがいなくて寂しいのは当然だよな、と思う。颯太は生まれてからずっと沙耶さんと一緒の時間を過ごして来たのだから。

「ママ、何日に帰って来る?」

 颯太がカレンダーを見て聞いた。

「うん、赤ちゃんがこのまま順調だったら一週間ぐらいで退院って言ってたから、あと三日……明々後日(しあさって)には帰って来れるよ?」

 そっか、と呟き、颯太はカレンダーに何かしら文字を書き込んでいる。
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