シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ただでさえ、俺は沙耶さんより五つも年下なのだ。

 育児に関してはど素人だし、頼りないのはごもっともだと自覚している。が、俺は沙耶さんと颯太の助けになりたいと思っていた。

 *

「……そりゃあ、お前。奥さんのフォローじゃないか?」

「フォロー?」

 仕事の合間、その言葉の如く、よくフォローを入れてくれる先輩に、父親の役割というものについて相談していた。

 喫煙室で「ああ」と頷き、彼は二本目の煙草に火を点けた。

「育児で助けたいのは分かるけど、そのレベルに達するのは相当だぞ?」

「え。そうなんですか?」

「ああ、実際、積極的にオムツ替えたり、ミルクあげたり、抱っこで寝かしつけたりって……奥さんが望む通りに出来るなら喜ばれるだろうけど……育児であんまり空回りな事をすると雷を落とされかねないからな」

「か、雷って」

「子供の事になると女は恐いぞ〜? 寝不足でイライラが溜まってる時は尚更だ」

 俺なんて何度叱られた事か、と眉をしかめて言い、先輩は口を尖らせた。

 今のところ、沙耶さんに怒られた事は一度も無い。と言うか、元々そんなに怒らない女性(ひと)なので、怒らせると恐いかもしれないとは思っていた。

「あの。フォローって……詳しくは何をすれば?」

 先輩は、うーんと宙を仰ぎ見てから、「家事、とか?」と言う。
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