シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
『どうしました?』

「……あ、すみません。急にエレベーターが止まってしまって。動かして欲しいんですけど」

 彼は躊躇なく話をして、今の状況を外部の人に伝えてくれた。

「三人です。その内の一人はまだ小さな子供も乗っているんで……出来るだけ急いで貰えると助かります」

 急にエレベーターの中に閉じ込められ、不安ばかりで内心焦っていた私とは大違いだ。

 ーー男の子って凄いな。

「……外の人と連絡も取れたし。まぁ、大丈夫ですよ」

 彼はニコッと笑い、八重歯を覗かせた。

「座って待ってたら、じきに動くと思うし」

 そう言いながら彼が腰を下ろすので、颯太も真似をしてしゃがんだ。

「……そうね。ありがとう」

 颯太の隣りに私も腰を下ろした。

 安堵から笑みを浮かべると、学生さんは「いや」と言って、どこか後ろ暗いような微妙な表情を見せた。

「もしかしたら、これ。俺のせいかもしれないんで」

「……え?」

「だってほら、鞄挟まれてるし」

 そう言って、地に着いた黒い鞄を指差した。

「ふふっ、そんなわけないじゃないっ」

ーー天然なのかな。面白い子だ。
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