シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 どうしてかは分からないけど、五つも年下の、しかも学生の彼に、どうしようもなく惹かれている。

 愛梨ちゃんと付き合ってる姿を見て凹んで、別れたと聞いて舞い上がって、でも既に本命がいると聞いてまた落ち込んでる。

 鳴海くんはまだ学生だから、これは意味のない恋心だ。頭ではそう分かってるのに、感情がついていかない。

 本命の子がいながら、鳴海くんが私に懐いてくるのは……。

 私が恋愛対象外だから……?

 ご近所さんで購買部のお姉さん、シングルマザーで大変そうだなって。きっと私に同情して心を寄せてくれているだけなんだ。

 それ以外には無いのに。

 家の前で鳴海くんと別れて、玄関扉を閉めた。目頭がじわりと熱くなった。

 ーー泣いちゃ駄目だ。こんな事で。

 一度零した涙を手の甲できゅっと拭う。

 早くに失恋が分かって良かったんだから。今は笑顔を作って、颯太にアイスを食べさせてあげよう。

 私には……大切な颯太がいるんだから。

 *

 翌日は出勤する事にした。

 颯太の熱は若干、微熱気味ではあったが、母が看病するからと言って、送り出してくれた。

 病気の時ぐらい、颯太に甘えさせてあげたい。でも愛情を注いだ分、また離れる時に颯太が辛くなるから。私は後ろ髪を引かれる思いで駅へと向かった。

 いつも通りの時間に出勤し、「昨日は急にすみませんでした」と祥子さんに頭を下げた。
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