シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 必死に彼との距離を空けるのだが、鳴海くんが迫って来て、トンと背中にスチール棚が当たった。

 ーーどうしよう、もう逃げられない。

 私は目の前の彼を見ていられなくて、視線を足元に落とした。

 棚を背にして固まっていると、鳴海くんの手がスチール棚を支えるように置かれた。

「……だから。やっぱり実力行使で行くことにした」

「え?」

 短く呟いた瞬間。細く綺麗な指先が私の顎に触れ、クイと持ち上げられる。唇に温かな感触が伝わった。

 その途端、背中に電流が走った。

 ーーうそ、今……。

 触れるだけのそれで顔を離し、鳴海くんが私の目を覗き込んだ。

 ーー私、鳴海くんにキスされた?

「何で気付かないの?」

「え、」

「俺が好きなのは沙耶さんだよ?」

「あ。え、だ、だって。私、鳴海くんに好かれる要素なんて、一つも……」

 どういう事だろう。頭が混乱する。だって、鳴海くんの好きな人は……。

「それは、沙耶さんに自覚が無いだけ。忘れてるだけだよ」

「え、忘れてるって。何が……?」

 何を言っているのか全然分からなくて、フッと顔を上げるのだが。至近距離で目が合い、私は息を飲んだ。
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