シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 九年前と言ったら私は十六、高校一年生だ。鳴海くんは十一歳だから小学生で五年生ぐらい。そんな少年といつ会った?

 ーー「俺が十一の頃、初めて会って惹かれて。でも、会えなくなっちゃって……諦めてた」

 あの口ぶりだときっと会ったのはその一度きり。せめて、どこで会ったのか分かれば。

 うーん……もうちょっとヒントが欲しい。

 結局、思い出す事など出来ずに翌朝を迎えた。

 *

「これでよしっ!」

 今朝も風が冷たく寒い。颯太にジャンバーを着せ、病み上がりのためにマフラーも巻いた。

 颯太の熱はすっかり下がり、元どおり。元気になった。私は颯太を乗せて自転車を走らせ、保育園へと向かった。

「颯ちゃん、行ってらっしゃい。今日もたくさん遊んでくるんだよ?」

「うん! 行ってきますっ」

 ふにゃっと顔全体を緩ませ、颯太が天真爛漫に笑う。愛おしくて、私も笑顔になる。

「ママだいすきーっ」

 不意にほっぺにチュウをされて、私は目を丸くした。

 ーー「ふっ、可愛い」

 昨日、私の目の前で妖しく笑った彼を思い出し、顔の中心からボボボと熱が広がった。
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