シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 開いたままの口が塞がらないのか、津島さんは呆気にとられていた。鳩が豆鉄砲を食うとは、こんな表情を言うのかもしれない。

「あ。学生に色々詮索されたく無いんで、子供がいる事はコレでお願いしますね?」

 言いながら人差し指を立てて口に当てる。

「え、でも……」

 どこか腑に落ちない様子で津島さんは眉をひそめた。

 ーーうん? 何だろう?

 洗剤を綺麗にすすぎながら私は首を傾げた。

 その時、ガチャっと廊下に続く扉が開き、祥子さんが顔を覗かせた。

「沙耶ちゃん、ついでにマグカップの漂白も頼めるかな?」

「あ、分かりました」

 祥子さんからマグカップを二つ受け取った。

「ちょっとちょっと、屋島さん」

 津島さんが、どういう訳か少し怒り口調で祥子さんに詰め寄った。

「水嶋ちゃんが独身ってどういう事?」

 祥子さんは一瞬、バツの悪そうな表情をし、すぐさま踵を返した。

 ハァ、と津島さんが盛大な溜め息をつく。

「あの……? 今ひとつ、話が読めないんですけど?」

 私はたらいに水を張り、マグカップを沈めてブリーチ剤を数滴入れた。
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