シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「……だってさぁ。沙耶ちゃんばっかり狡いじゃん」

 携帯を机上に置き、祥子さんが僅かに睨み上げた。

「狡い? 何がですか?」

「結婚してなくても子供いるじゃん」

「え」

「学生みんなにちやほやされて、若くて可愛いからこれから誰とでも結婚出来そうだし。その上津島さんみたいなハイスペックの人にも想われて、沙耶ちゃんばっかりが幸せそう。私はそうじゃないんだって思い知らされて、見ていて嫌になるの」

「そんな……」

 ーー私、そんなつもり無い。

 そう言いたいのに、祥子さんに敵意を向けられたのがショックで、言葉が出てこない。

「私ね、もうずっと不妊治療受けてるの」

「……ふ、妊?」

「二十二で結婚して、旦那との間に中々子供が出来なくて。二十四の頃から四年間、ずっと婦人科通い。
 ……私だって子供、欲しいよ。沙耶ちゃんが羨ましいよ…っ」

 そう言ったきり、祥子さんは両手で顔を覆った。微かに肩を震わせ、泣いているのだと分かる。

「そうだったんですね。…….私、何も知らなくて。デリカシーない事ばっかり言って、ごめんなさい」

「……っ、馬鹿っ。何であなたが謝るのよっ」

「でも」

「沙耶ちゃんは謝らないで、私が悪いの。全部っ。子供出来ないってストレスと不安で、沙耶ちゃんに八つ当たりしてたの」

 ーー祥子さん。
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