シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 祥子さんは椅子から立ち上がると、私に向き直り頭を下げた。

「ごめんなさい……」

「そんな。別に怒ってないですよ、私」

「本当に?」

「そりゃあ、自分の知らない所で自分の事をあれこれ話されるのはいい気分じゃないですけど」

 手に持ったマグカップとお弁当箱を置き、私はもう一つの椅子を出して座った。祥子さんも再度隣りに座る。

「祥子さん、私ね。パンダの赤ちゃんなんです」

「は? パンダ?」

「この購買部を動物園に例えて、新入りした私がパンダの赤ちゃん。祥子さんがお母さん。だから、学生たちはただ物珍しいだけでみんな話し掛けてくれるんです。好かれてるのとは、違います」

 学生たちにちやほやされている、という言葉を訂正したくてキッパリと言い切った。

「そっか……パンダの赤ちゃんか。それはそれで可愛いね」

「最初だけですよ」

「あははっ」

 祥子さんの顔に笑みが戻り、幾らか安堵する。

「でも、祥子さん」

「なに?」

「一個気になるんですけど、何で津島さんは駄目で学生の……例えば澤野くんとかはいいんですか?」

「え?」

「ほら、私の恋愛に割と前向きで、応援してくれてたじゃないですか」
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