シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「……ああ。それはね。学生とだったら、そこそこ困難で、結婚も難しいかなって思ったから」

「うーん……つまり? 私がそこそこ不幸で悩みを抱えてたら嬉しい、と?」

「そっ、そこまでは言わないけど。私と同じぐらいは悩んでて欲しいなって」

 もう溜め息しか出てこない。悩みなんて人それぞれ、表面には見えないものだ。

「祥子さん? 私、悩みいっぱいですよ? シングルマザーって大変だし、母親の私が働かないといけないから、子供には我慢をさせるばっかりで」

 祥子さんは口を引き結び、自分の手元に視線を落とした。

「あ、と。言っときますけど、別にこれは子供自慢じゃないですからね?」

 フッと口角を上げ、祥子さんが笑う。

「分かってるよ」

 祥子さんが後ろを振り返り、スチール棚に置いた時計を見て立ち上がる。もうそろそろ四時半だ。

「時間だね、お店開けよっか?」

「はい」

 二人っきりの空間で、およそ九時間半も一緒にいる仕事仲間だから。祥子さんとはいい関係でいたい。

 ***
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