シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 レジで会計を済ませて階段を登って行く彼を見ていると、愛梨ちゃんがポツリと言った。

「沙耶っちだから言うけどね? 愛梨の元カレ、仁だったの」

「……鳴海くん?」

「そう」

 知っていて知らない振りをするのは悪いなと思うけれど、私は彼女の話に合わせて相槌を打った。

「別れ話をされた時にね。仁に、他に好きな人がいるって言われたの」

「そ、そうなんだ……悲しかったね?」

「うん」

 ズキンと心臓が痛くなる。

 既に鳴海くんから告白されていたので、愛梨ちゃんに対して申し訳ないな、と罪悪感を抱いていた。

「愛梨と付き合いながら浮気? って怒ったんだけど……。仁がね、凄く真剣な顔で言ったの。初恋の人と九年ぶりに会えたから、諦めたくないって」

「……え」

 彼の本心を人づてに聞いて、ふと真顔になる。

「その人との出会いとか聞いてたら、あ、無理だな、勝ち目ないなって思って。泣く泣く諦めたの」

「そう、なんだ?」

「……と言っても。澤野っちが慰めてくれて、愛梨に想いをぶつけてくれたから今はハッピーなんだけどね?」
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