シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 愛梨ちゃんは、満面の笑みで顔の横にピースを作った。決して強がりではないその仕草に、澤野くんの頑張りが感じられた。

 あんなに落ち込んでいた愛梨ちゃんが笑顔を見せてくれる、それが今の私にとっては何よりの救いだ。

「ちなみに、その出会いってどんな感じだったのか……聞いてもいい?」

 未だに思い出せない鳴海くんとの出会いを、知るチャンスだと思った。

「え。うん、良いよー? なんかねー、仁が小五の時、病院で親切なお姉さんに助けて貰ったって言ってて。そのお姉さんがいたから苦しまずに病室まで運んで貰えたって、そんな感じの事聞いたよ?」

 ーー病院? うん? 待てよ?

 そこで頭をフル回転させた。

 私が高一の時……病院で、小学生らしき少年に親切にした記憶って……。

 もう直ぐそこまで引っ張り出せている気がするのに、思い出せそうで思い出せない。

「……病院で、知らないお姉さんに?」

「うん。ほら、一駅先に総合病院があるでしょ? あそこの受付で会ったんだって。お母さんが電話で外に出てた時に、急にお腹が痛くなったらしくて。それで一人で苦しんでたら、隣りにいたお姉さんが、大丈夫って声を掛けてくれたって」

 必死に頭を働かせ、アッと閃く光景を見出せた。
< 79 / 430 >

この作品をシェア

pagetop