シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「沙耶ちゃん?」

 不意に祥子さんに声を掛けられて、ハッとする。

「どうしたの? ボンヤリして。時間だからお店閉めるよ?」

「あっ! はい。すみません」

 ミシン糸の棚を移動させる祥子さんに続いて、私も急いで片付けに取り掛かった。

「てかさぁ。チャックがあの愛梨ちゃんと付き合ってるって聞いて、私びっくりしたよぉ」

 祥子さんはやはり気付いていなかった様子で、肩をすくめた。

「ごめんね。私、あの子はてっきり沙耶ちゃんの事が好きなんだと思い込んでた」

「ふふっ、そういうものですよ。祥子さん。私、特別モテる人種じゃ無いですし」

 自動シャッターのボタンを押し、店を完全に閉めた。

 ともかくは、鳴海くんとの出会いをちゃんと思い出せて良かった。あとは彼に気持ちを伝えて、この先の事を一緒に考えて貰うのみだ。

 私は安堵から小さく微笑んだ。

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