シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「うそ……。そんなの、知らなかった」

「そりゃそーだよ、言ってないもん」

 鳴海くんは何てこと無い表情(かお)でニパッと笑った。

「大変だったでしょう? その、金銭的な問題とか。色々と……」

「うーん、そう…だね。俺がって言うより、母親がしんどそうだった。父親から養育費は貰ってたみたいだけど、全然足りなくて。パート掛け持ちしたりしてさ。
 だから俺も、中三ぐらいからバイト始めて……まぁ。それなりに頑張った、かな?」

「そっか……。苦労してきたんだね」

 言ってから、私は俯いた。言葉にすると何て軽いんだろう。鳴海くんの立場を共感して言ったつもりだが、苦労の二文字はその身になってみないと分からない。

 中学三年生なんて、丁度受験の時期なのに。みんなが志望校に入ろうと躍起になっていた時。鳴海くんは、お母さんとの生活の事も考えていたんだ。言ってみれば、苦学生、だ。

 そんな彼に、私は、私と付き合って、将来的には結婚して欲しいと言っても良いのかな?

 コブ付きの私を、鳴海くんに受け止めて貰おうだなんて、ムシが良すぎる?

「沙耶さん……?」

「えっ、な、なに?」

「いや。眉間にシワ寄せてるから……どうしたのかなって、思って」

「ううんっ、何でも、無い…よ?」
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