シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか？
　寒さから唇が震えて、浮かべた笑顔はぎこちないものとなった。

　鳴海くんは、私がシングルマザーで彼のお母さんと同じ母子家庭だと分かった上で告白してくれた。颯太の父親になる事も、既に考えてくれている。

　自分のその生い立ちが有ったからこそ、私と颯太を受け入れると言ってくれたのかもしれないけど……。今さらそんな苦労を背負わせても良いのかな？

　考え込んだら悲しくなった。

「……沙耶さん、迷ってる？」

「え…っ」

「告白の返事」

　私は鳴海くんを見て、不自然に視線を泳がせた。

　ーー図星、だ。正直なところ迷ってる。

　好きな人と両想いになりたくて、鳴海くんにイエスを出すつもりでいたのに。本当にそうするべきなのか、迷ってる。

「……今日。本当は断るつもりだったんだよね？　でも、俺が母子家庭だって言ったから、自分の事と重ねて…同情してる？」

「それは違うっ」

「……？　違うの？」

　鳴海くんは眉をひそめた。少し悲しそうな目で、首を傾げている。

　私は地面を見つめたまま白い息を吐き出した。少しだけ腰を浮かし、横へと移動する。すると鳴海くんと空いた距離がピタリと埋まった。

　レモンの様な、グレープフルーツのような爽やかな香りが濃くなった。
< 93 / 430 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop