シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「……前の恋愛って。もしかして、颯太くんの……?」

 父親、という言葉を飲み込み、鳴海くんが眉を寄せた。

「そう。二十歳の時……五つ上の人と付き合ってたんだけど。妊娠を告げた途端に堕胎のお金渡されて、逃げられたの」

 鳴海くんは怪訝な顔で目を見開いた。

「……そいつ、クソだな…っ」

 キッと地面を睨みつけ、憤っているのが見て取れる。こんな風に怒った顔を見るのは初めてだ。

「そうだね。私も薄情な人だなって、思った。だから、颯太は温かい子に育つようにって、私と、私の両親で愛情を注いでる」

「……そっか」

 少しの間、お互いに沈黙していた。今後の事を話さなければいけないのに、何となく今の空気を味わっていたかった。

 冬の夜風でザザザ、と葉音が響いた。

 ーーやばいな。体、冷えてきちゃった。そろそろ帰らないと風邪をひくかも。

暗い夜空を見上げて、私は肩をさすった。

「……俺で良いの?」

「えっ?」

 沈黙を破り、鳴海くんが私の目を覗き込んだ。

「沙耶さんの、その……。結婚相手、俺で良いの?」

 ーー結婚相手。

 それ、すなわち。旦那さま……だ。

 私は、はにかみながら鳴海くんを見つめた。

「“で”じゃないよ」

「え」
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