シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「鳴海くんが良いの。学生でも何でも、私は鳴海くんが良い」

「う……」

 急に、鳴海くんが胸を押さえて(うずくま)った。

 ーーえ? 何??

 どこか体の具合が悪いのかもしれない、そう思って、大丈夫、と聞こうとした時。鳴海くんがそのままの体勢で言った。

「あの、沙耶さん?」

「な……、なに?」

「その。……だ、」

「だ?」

「だ抱き締めても……っ、良いですか?」

「……は?」

 ーー何を言ってるんだろう、この子は。

 それに体の具合が悪い訳では無いんだと察し、拍子抜けする。

 鳴海くんの赤面が移って、私は真っ赤な顔で唖然としていた。

「さ、先にキスしといて。今度はそんな事聞いちゃうの?」

「あ、いや。だって……」

「良いよ。聞かなくても良いから……抱き締めてっ」

 恥ずかしさに俯いた。さっきまで寒くて震えていたのに、顔の中心から耳の端まで熱が広がっていた。

 ふわっと温かい感触が伝わり、鳴海くんが私の体を包み込んだ。爽やかな柑橘系の香りがして、彼の腕の中は幸せの熱で満ちていた。

「……はぁ。幸せだなぁ」

 鳴海くんが、物憂い吐息をついた。

「……うん」

 私も両手をゆっくりと上げ、彼の背中に添えた。
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