女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「誰と使ったのよ!って喧嘩になったのか?」
思わぬツッコミに、ブッと吹き出した。
「どうして、そうなるんだよ」
「いや、物珍しくて開けてみたかなって。それを遥ちゃんに勘違いされるって、アキ、そういう可愛いところあるだろ」
どこから、どう訂正すればいいのか。
馬鹿らしくて、話すのが億劫になる。
すると直樹の方が、真面目な声色で告げた。
「陽菜が、妊娠した」
「は」
「今、三ヶ月。まだ言うなって、口止めされたけどな。アキとは事務所のこともあるし」
「ああ、そうか。とりあえず、おめでとさん」
「ああ、さんきゅ」
グルグルと、行き場のない思いに悩んでいる自分が、情けなくなる。
「陽菜さんの懐妊の話、まだ遥にはしないでおいてくれないか」
「微妙なところってやつか」
「ああ、まあ」
妊娠と、机の上の箱と、手を出すのと、遥が全てを結びつけられるのかは、わからないが。
「私たちの関係の先には、なにがあるんでしょう」と、言った遥。
今はどんな些細なきっかけも、遥の耳に入れたくなかった。