女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 遅くなった帰宅に、遥は起きて待ってはいなかった。

 ラップのかけられた夕食を横目に、悪いと思いつつ、食欲はなく手をつけられなかった。
 そのまま、冷蔵庫にしまう。

 ひとり寝を、こんなにも寂しいと思う日が来るとはな。
 嘲笑してみても、一向に寝室に行きたいと思えない。

 ぼんやりとテレビを眺めていると、いつの日かのデジャブのようにテレビを消された。

「眠れないんですか」

「いや」

「ココアを、飲みますか?」

「いや、寝るよ」

「そう、ですか」

 眠れない夜に、ココアを一緒に飲んだ。
 今はそれすら、行動する気力が起きない。

 お互いの扉の前で「おやすみ」と挨拶を済ませ、別々の部屋に入った。

 誰もいない寝室。
 シングルベッドが、やけに大きく感じる。

 置きっぱなしだった机の上の白い小さな箱に、笑われているような気さえした。
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