女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「今から電話をするから、ハルも付き合ってくれないか」
「電話に、付き合う、んですか」
「ああ。クソババアに、電話をしようと思う」
呼称を出すだけで、二人の間に緊張が走る。
晶は先に体を起こし、寝室に置いていた鞄に仕事用のPHSが入っていたため、それを取り行った。
それからもう一度遥の元に戻り、遥を抱き起こした。
遥は晶と並んでベッドの上に座り、寄り添って体に腕を回す。
「夜、遅いですが、大丈夫でしょうか」
「向こうから掛けてくる時は、いつもお構いなしだ。こっちが気にする必要はない」
そう言いつつ、ゴクリと喉が鳴って情けなくなる。
すると、遥が体を回している腕に力を込めた。
「ん? なに」
「その、緊張して」
「ハハ。俺も」
遥の頭をかき回してから、深く息を吸ってPHSに『クソババア』を表示させる。
意を決して、通話ボタンを押した。
呼び出し音を聞きながら、キリキリと胃が痛くなる。
この時間が永遠に感じ、何度も電話を切りたくなるが、辛抱強く待ち続けた。