女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「あんたに、なにがわかるんだよ」
「あら。私は、あなたのためを思って言っているのよ」
「あんたに、俺の幸せを語ってほしくない」
俺のためだと言って、全ては自分の思い通りにしたいだけだ。
晶がお嬢様の沙織と結婚すれば、自分の体裁がいい。ただ、それだけの話。
「たまたま、梅元フーズの工場長さんに相談されたの。若い男性社員に出会いがなくて、と。だから、ちょうどお似合いの人がいますよって教えて差し上げたのよ」
口から出まかせを、つらつらと語り出す貴美子に反吐が出る。
「寄生する先を探している子がいるんですって、口を滑らしそうになって困ったわ〜。あら。ドブネズミというよりも、寄生虫かしら。どちらにしても害虫ね」
電話口から漏れ聞こえたのだろう。
遥が体を固くしたのがわかった。
この人と話しても無駄なのは、百も承知だ。
けれど、言わずにはいられなかった。
「今後、遥に少しでも変な真似をしてみろ。俺の全てを投げ打ってでも、思い知らせてやるからな」
乱暴に通話を切り、PHSを放り投げる。
PHSは机の上を滑り、派手な音をさせ、向こう側に落ちた。